実正則行列(実数を成分とし、逆を有する行列)は、直交行列と正値対称行列の積に分解できる。これを極分解という。
直交行列とは、任意の2つのベクトルa,b の内積を保存する行列のことで、
を満たす。これらから、直交行列は転置行列が逆行列になるような行列とも言える。
正値対称行列とは、任意のベクトルaに対して、
を満たす。さらに正値対称行列では、固有値がすべて正で、対応する固有ベクトルは互いに直交するという性質もある。つまり、固有ベクトルを並べて書いた行列と、固有値を対角項に配した行列の積の形で書ける(これをスペクトル分解という)。スペクトル分解できるので、応力やひずみには主値や主軸があることも分かる。(後に、主応力について勉強するところで少し取り扱う)
変形勾配テンソルも実正則行列であるので、極分解できる。極分解による直交行列や正値対称行列の力学的な意味を考えることは重要である。
結論から言えば、変形勾配は、ストレッチと回転の組み合わせとして表現できる。行列Rは剛体回転を表す直交行列、UやVはストレッチを表す正値対称行列である。変形の順序によって2通りの分解が可能であるが、剛体回転を表す直交行列Rは共通であることに注意する
グリーン・ラグランジュひずみの定義から明らかなように、
と書ける。
したがって、グリーン・ラグランジュひずみには、極分解した正値対称行列のみが現れていて、剛体回転の項がきちんとドロップしている事が分かる。
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